自分で決めた期日が近付いてきた。
涼真に結婚のプレッシャーをかけるときだ。
この1年、期待したくなる言葉は何度かあった。
「親から彼女いないの?ってめっちゃ聞かれる〜」
「みなみのこと、親に話していい?」
「今回はおばあちゃんからも彼女いないのかって言われた」
半年を過ぎたあたりから思わせぶりな言葉はあるものの、結局ここまで私の存在は秘密にされている。
そして「結婚」の2文字については、一度も口に出されていない。
【男は行動を見ろ】
古今東西、様々な恋愛本に書かれている、恋愛の鉄則。
この鉄則に乗っ取れば、涼真は口だけで何も行動をしていない…ということになるんだろうか。
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「みなみー、マッサージして〜♡」
久しぶりに昼間からデートした夜。
涼真のおねだりでマッサージをしてあげてると、突然涼真が話し出した。
「ねぇ、みなみと鍋行ったのいつだっけ?」
「…?去年の今頃ね。どうしたの、突然。懐かしいわね」
鍋は涼真と行った3回目のご飯。
涼真を一気に意識した日でもある。
「いや、なんとなく…」
そう言って、涼真はまた目を閉じた。
〝涼真はこれからのことを考えてるんじゃないか?〟
ふとそう思った。
特に根拠はないんだけど。
いや、期待しないでおこう。
期待するだけ、裏切られたときのショックは大きいんだから。
クリスマスにプロポーズされないかな。
お正月に両親に紹介してくれないかな。
イベント目白押しの冬、期待が押し寄せるたびに「期待しないように」と自分に言い聞かせる。
でも…
ねぇ、期待するのってそんなに悪いこと?
被害者意識が頭の片隅に持ち上がる。
…違う。期待するのは悪くはない。
〝自分が思う好きより、相手が思う好きの方が軽い〟
その事実を直視するのが怖いだけ。
深呼吸して涼真の広い背中をじわりと押す。
さよならまで、せめて思い切り楽しもう。
君が私を選ばなくても、私の価値は変わらないんだから。
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