一緒に住もうって提案があってから1ヶ月。週に1度か2度、デートを重ねていたにも関わらず、その後涼真からは具体的な話は1つもなかった。
それが涼真の答えなんだ。
“全ての約束が具体的にならない“
それが私を苦しめていた。
涼真は口先ばかり。
私はそんな結論に達していた。
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ある日のデートの帰り、涼真を送って帰る最中に質問を投げかけた。
「涼真はさ、結婚っていつくらいに考えてる?
私はできれば今年中にしたいなって思うんだけど」
最後通牒のつもりだった。
これで具体的な話が出ないなら、もう別れよう。
「そうだな〜」
私は涼真の答えを待った。
「…俺、転職しようかなって考えてるんだよね」
「海外もいいと思う」
私は自分の心が急速に冷めていくのを感じた。
「転職するときはみなみに言わなきゃって思ってるよ」だの「俺が転職したら、みなみはどうする?」だの。
将来を匂わせる発言はするけど、結婚のことは絶対に具体的にはしない。
涼真が話を逸らしたがっているのは明らかだった。
「そっか、じゃあ涼真はいまは転職って感じか。頑張ってね」
「…まぁ、それはそれで別の話なんだけどさ」
「そうだね^^」
嫌味に聞こえないように、最大限の注意を払ってそう伝えた。
浮気した相手に、結婚結婚とすがる女には絶対になりたくなかった。
そのあとも、最近の仕事の話とか、面白かった映画についての話とか。関係のない話ばかり。
「着いたよ。じゃあ、明日仕事頑張ってね」
家の前についても、涼真は車から降りようとしなかった。
「年内・・・くらいかな」
「もう一回だけ、時間をちょうだい。そこできちんと話そう」
一見、誠実そうに聞こえる涼真の言葉も、もう私の心には響かなかった。
ごめんね、もう無理だよ。
「結婚しよう」
「プロポーズする」
「一緒に住もう」
涼真は、この1年間いろんなことを言ってくれたけど、実際に行動してくれたのは、親に会わせてくれただけ。
“人の本音は言葉じゃなくて行動をみろ“
っていうじゃない?
今後に及んで「話し合おう」って一体何を?
よりを戻したときも、この前喧嘩をした後も、散々話し合ってきたじゃない。
そこで決めたこと、何も実現されてないじゃない?
これ以上「話し合い」で、中途半端に希望を持たされて、失望するのは耐えられないよ。
「分かった。じゃあ、また今度ね」
「また連絡するよ」
そういうと涼真はマンションのエントランスに消えていった。
さよなら。
“今度“は、もうないよ。
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