桐島くんと初めてのご飯

2歳年下の好青年・桐島くんと初めてのご飯。

やっぱり彼は優等生らしく、ちょっと小洒落た、それでいて肩肘張らない。ちょうどいいお店を選んでくれた。

そういえば私服初めて見るな
オシャレだけど嫌味じゃない。
もー。どこまでも隙がないのね。
仕事もデートも卒なくこなします!って感じ。

「みなみさんって、他にはどんな仕事してるんですか?」
「私は外に出る仕事が多いのよ。桐島くんとの仕事はサブで入ってたの」

会話の流れもちょうどいい。
仕事の話からはじまって、趣味の話、家族の話。

「この前家族で旅行したんですよ〜。写真見ます?」

「え〜、妹さん美人!」

見せてもらった家族写真は、なんと全員美男美女。
なるほど、
DNAからイケメンってわけね。
こいつに隙はないのか。

一方的に話すわけでもなく、こちらの話も引き出してくれる。

あれ?これで終わりかな?

と、思わせておいてちゃんと恋バナに持っていく手腕も本当お見事。

「みなみさんって、どんな人が好きなんですか?」
「仕事に情熱を持ってて、会話が噛み合う人かな」

「僕半年くらい前に別れたんですよ。みなみさんは?」
「私は2年くらい前に別れたのよね」

普通に普通にふっつーーーーーに楽しんだけど

でもなーんか優等生すぎる?

っていうのは贅沢な悩みかな。

楽しい時間はあっという間。
食事も終わりに差し掛かったころ、桐島くんから提案があった。

「時間あったら、二軒目どうですか?」

そうね、もうちょっと君のこと知りたいかな。

「いいわね。行こっか」

おすすめだというバーへ向かう途中、桐島くんがふと言った。

「今年、全然雪降りませんねー」

今年の冬は暖冬だ。
例年なら雪が積もっててもおかしくない時季なのに、今年はまだ雪を見ていない。

雪は最初の1回だけ好き。
ロマンチックな気持ちになるじゃない?
でも溶けてぐちゃぐちゃになったり、凍って滑ったりすると面倒になっちゃうんだよね。

〝最初の1回だけ、雪が好き〟
誰も同意してくれないのにいつも主張してしまう。

「雪、最初だけテンション上がるのよね」
「あー!分かります。溶けてくるとだんだんうざくなってくるんですけどね。笑」
「そう!最初だけっていうのがポイントなの」

思いがけない返答に、思わずテンションが上がっちゃった。
今まで誰にも同意されなかった感情を肯定してもらうだけで、どうしてこうも高鳴るのかしら。

少しの余韻と無言を楽しみながら、桐島くんの隣を歩く。
探り合ってる関係特有の、微妙な距離感。
もどかしいような気もするし、これくらいを保っておきたいような気もする。

あとちょっとなんだけどな。

好きなのか、友達なのか。

自分の気持ちにラベルをつけないままで、最初の夜は解散。

 

2週間後、LINEが鳴った。

「僕、これから忙しくなるんですよ。みなみさんもですよね?
   決起集会しませんか?」


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