一緒に住まない?

涼真に長文LINEを送ったら、30分ほどで既読がついた。

仕事中なのは知っていた。
すぐに返事が来るのか、それとも電話がくるのか。
・・・無視するのか。

キャンプ以降、私たちの関係はうまくいっているとは言えなかった。
涼真との関係を続けていくのか?
自分自身への問いかけに、自信を持って「YES」とも言えなかった。

LINEを送ってから4時間後、返事が返ってきた。

「来週どこかで会える?」

******

約束の日は朝から何も手につかなかった。
会う日を決めてから、3日間、涼真からの連絡はなかった。

何を考えているんだろう。

反省してる?怒ってる?

自分の行動で相手を怒らせたときは、ソワソワするものだけど、この時の私はそうじゃなかった。
涼真が怒っていても、別によかった。
涼真の出方次第では、別れよう。
私が送ったLINEを見て、怒ったり、逃げるような男だったらいらない。

約束の時間に少し遅れて、涼真がやってきた。
私の車に乗り込むと世間話もそこそこに口を開く。

「まずは、ごめん。確かに俺が思っている以上に、みなみは知ってた。これだけ知ってたら辛いことも多かったと思う。向こうが言ったことに関して言いたいことも色々あるけど、俺が悪かったことだから、何も言わない」

「…」

本当は言い訳して欲しかった。
「本気じゃないよ。みなみだけだよ。向こうから押されて断りきれなかった」
そう言ってくれたら、少しは楽になれるのに。

向こうの子も好きだったんでしょ?
楽しくデートしてたんでしょ?

勝手な想像を巡らせては、いつも心が暗くなる。

「みなみは何個か“これをしてくれたら忘れられる”って言うのをあげてくれたけど・・・辛くなるそもそもの原因は俺だから。俺は、みなみが辛くならない方法っていうのは“俺を離れること”だと思う」

暗闇の車の中、私は静かに失望した。
あぁ。別れ話か。

今後も責められる可能性があるなら別れたがる。
問題から逃げたがる。
しかも自分が罪悪感を抱かないように、私に”別れよう”って言わせたがるタイプの逃げ方。

それだけの男だったんだ。

「私は、LINEに書いたのが全てだよ。今後も涼真と一緒にいたいなって思う。でも涼真が”こんなに気を使うことが多くて面倒くさい”って思うなら、仕方ないなって思う」

「…」

「いつも映画にいく場所に、コーヒー屋さんが2件あるの知ってる?」

??
突然、別の方向性に話を持ち出されて戸惑う。

「1つはスタバ。もう一つが”○○珈琲”(愛ちゃんの苗字)。俺1人だったら○○珈琲に行くんだけど、みなみと変な空気になりたくないから、なるべく前も通らないようにしてた」

「そうなんだ。気づかなかった」

「いや、いいんだよ。みなみが気づかないのが一番だから」

「そうじゃなくて、涼真が気を使ってくれてたこと」

「いや・・・」

涼真が言いたいのはそういうことじゃないらしい。
話の方向性が見えない。

「今後も、みなみは色んなことを思い出すと思う。でも…俺の開き直りかもしれないけど、いっそ一緒に大阪(愛ちゃんが住んでる場所)行ったりして、楽しい思い出で塗り替えていけば…乗り越えていけるのかなって思うんだけど、みなみはどう思う?」

涼真が私から何を聞き出したいのか分からない。
別れ話じゃなかったの?

「私も、大阪行きたいなって思うし、楽しい思い出で塗りつぶしていければなって思うよ」

「…」

そこまで話すと、涼真は一人で考え込んだ。
長い沈黙。

数分後、涼真が口を開いた。

「じゃあ…一緒に住む?」

「…え?!」

いろんな展開をシミュレーションしてきたけど、ここまで急激に梶を切られるのは想定外だった。

「それは結婚前提でってこと??」

「もちろん。グダグダするつもりはないよ。そんなに長く住む家じゃないだろうから来月くらいには物件決めて…でどうかな?」

「え?!・・・う、うん」

突然の提案に頭がついていかない。

「別れ話じゃなかったの?」

「いや。今日は2つ話そうと思ってきた。
離れた方がいいんじゃないかっていうことと、一緒に住もうってこと」

いや、その2択が私の中で結びつかないって話なんだけど。

・・・でもいいや。
ここでグダグダ問い詰めるのも野暮な気がするし、せっかく涼真が出してくれた提案だ。

「私は・・・涼真と一緒に住んだら、楽しいと思う」

「じゃあ・・・これからもよろしくお願いします」

そのあとはどこに住もうかとか、そう言う話を少しして。
キスをして解散した。
私の車が見えなくなるまで、涼真は手を降ってくれた。

******

涼真の思考回路はよく分かりません。

それでも、私に対して涼真なりに気を使ってくれてるし、涼真なりに誠実に接してくれてるんだなっていうのは感じます。

…私に伝わってないだけなのかな。

家に返ってTwitterを覗くと、ちぇるちぇるランドの王子様がこんなことをつぶやいていた。

「ピンク色の愛が欲しいのに、黄色の愛しかくれない人とは、この先もどこかで、あなたがモヤモヤするだけだよ」ーーーりゅうちぇる


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